これはアレスの宮殿です。
静閑なたたずまいですが、中では緊張が走っていました。
「ビーナス、良く聞け。これから何が起こるか、知っているな?」
「はい…」
「ハルモニアを連れて金星に逃げろ」
「あなたは?」
「私はここでやることがある」
「あなたも逃げて」
「できない! この日のために私は生まれてきたんだ」
「あなた…」
アレスは小型宇宙船を用意するとビーナスとハルモニアを無理矢理押し込み、発進ボタンを押しました」
「あなた〜!! あなたも脱出用の宇宙船で最後は逃げてね〜」
「ラージャー、ビーーーーナス!!」
ふたりを載せた宇宙船が小さくなると、アレスは宮殿に戻り、コンソールディスプレイの前に
座り、キーボードをたたき始めました。
アレスはイケメンであり、しかも理系でした。
「むむむ、このまま天体が衝突すると、ここの陸地じゃないか…。陸地に衝突したって意味がない。生命は海に生息しているんだから」
しばらく計算して、彼はつぶやきました。
「小惑星の軌道を変えるしかない。だとすれば自分が脱出するための宇宙船をぶつけよう」