「前世記憶を持ったまま生まれ変わることが楽しいし、嬉しい」と言った人は、証言している間、ずっとカチカチでした。
インタビューの前、私とトラさんはホテルのレストランで夕食を食べていました。
戻ると紹介者に連れられた証言者がトラさんの部屋にいました。
私の部屋に来るように言うと、黙ってコックリしました。
インタビューが始まりましたが、彼女は緊張してカチカチです。
私の質問に対して短い答えしかしません。
正式なインタビューなど初めてなのです。
それでも私は彼女が答えるたびにうなづきました。
それで少しうち解けてきました。
彼女は、インタビューというのは否定的なものだと思っていたに違いありません。
最後に例の質問をしました。
「次も前世記憶を持って生まれ変わりたいですか?」
「もちろんです」
「なぜ?」
「前世記憶を持ったまま生まれ変わることが楽しいし、嬉しいからです」
このとき彼女は、本当に嬉しそうな笑顔になりました。
私も嬉しくて笑顔になりました。
最後は両手で握手をしたら、やはり笑いました。
証言に来て良かったと思ったに違いありません。
けれど彼女の喋った内容は、今までの証言者の上を行くものではありませんでした。
既知の事実ばかりです。
でも彼女は最後のセンテンスを言ったことに意味があると思います。
あれはスープを飲まなかった者の人生観をひと言で証言したからです。
その影響は計り知れないとさえ、思います。