運命と自由（その２２９）…無意識嬢の声４７

もう少しドクターフリッツのことを書きます。
この写真は待合室です。
ひとり１０ドル出すと誰でも手術が受けられます。
すごい人数なのでひとり１分です。
「頭が痛い」
というといきなり頭にドリルで穴をあけられたりします（笑）。
「腰が痛い」
と言うと背中を切り、手を突っ込んで背骨を直したりします（笑）
私は取材だけが目的で、手術する気はありませんでした。
家族から「今回は危ないことはしないように」と言われていたらからです。
順番が私のところに回ってきました。
私の骨折した手はコートに隠れていました。
でもフリッツはコートを指さして言ったのです。
「その手は私が手術すれば治る」
ためらっている私にフリッツは親指を立てて日本語で言いました。
「ドキョウ」
こう言われては手術をしないわけにはいきません。
テープレコーダーをスタートし、ボランティアの看護婦にカメラを渡して「撮ってくれ」と言いました。
フリッツはメスで１０センチ切ると、ノミと金槌を持ち出してコンコンと骨を削ります。
まったく痛くありません。
私はフリッツにあの世について聞いています。
この経験はバイク事故があったからこそです。